幾度時が過ぎても平行線は交わらない。この距離が埋まることなんて決してない。でもそれを「絶望的だ」とは思わない、ただ普通のこと。VOCALOIDがどうとか、人間がどうだとか、そんなことよりもくだらない話をしようよ！
それでいいんだよ、それで。

しんじてもらえなくてもいい、笑われたっていい。これがぼく〈私〉のあいでんてぃ?。
嘘のままでもいいの。たったひとつ、ぼく〈私〉だけの、きみ〈あなた〉のための嘘がいいの！

私がいたから君がいて、君がいたから私もいまここにいる。何ともない時も、この声が止まってもそばにいて。
オンリーワンでも等身大でもなくていい、嘘も本当も全部、君は君だから愛おしい！

人のような声が出ない、感情とやらがわからないからお手本を真似るしかできない。それでも機械ではないと君は否定するから、僕は人であるように錯覚してしまう。もう僕は要らないのかと、ほんの少しふざけるだけで君はすぐ怒るんだ。
僕は歌いたい。頑固で愛しい君の歌を。

描かれた通りに音を拾う不完全な歌声が美しくて忘れられなかった。涙も痛みも壊れかけた心も音に変えて歌っている。
そんなからっぽのいのちに今日も救われている。

称賛も批判も、出会いも別れも、君からすればただの記号で。どれだけ与えても何も返ってこない。こっちの存在すらもきっと君にはどうでもよいのだろう。だからよかった。
君はただ歌ってて。今日も、君が生きてなくてよかった。

僕は歌うだけの存在だ。永遠は僕だけに残酷に与えられ、君はいつか果てるんだろう。だからこそ、僕は限りある命を祝福しよう。君が生を謳い切って、いつの日かまた巡り逢うことを。
此処でただひたすら願うよ。

君と描いてきた思い出を、紡いできた形のない歌を、忘れてしまわぬように。ふたりが確かにここにいた証を残せるように。この声で、何度でも。
大切なものは目に見えないから。

それが君の選択なら。たとえ君が私を忘れ去ってもその先で幸せであるなら、私は旅立つ君の未来を祈るよ。
でもどうかこれだけは覚えていて。私はここにちゃんといるよ、ずっと君のそばに。

過去紡がれた音は、声は、もう聞こえない。取り戻すことはできない、記憶の中に残るだけ。でも確かに存在していたのだ。
全ての演奏家たちへ。そして、そこに共にあったであろう"彼女"たちへ。
祈りを込めて。